私たちの脳の中の小人――ペンフィールドのホムンクルスの話
「ホムンクルス」というのは、もとは古代ヨーロッパの錬金術で作れられるという、小人のことを言いました。
ハーブや動物の内臓で作られたその小人は、生まれながらに知識を持ち、フラスコ内でしか生きられなかったとか。
そんなお伽話の中の科学が信じられていた昔と違い、現在「ホムンクルス」と言うと別の小人のことを指すようになっています。
カナダの脳神経外科医ペンフィールによると、私たちの脳の中には、グロテスクな小人――ホムンクルスが住んでいるということなのです。
Photo by Dennis Jarvis
【ペンフィールド「大脳は身体のどこの部分をそれぞれに司っているんだろう?」】
私たちの全身の機能を司るという臓器、脳。
その脳の中で特に、知覚、思考、推理、記憶、自分の意思による運動を司るのが「大脳」です。
そして電気刺激を用いて「どの大脳の箇所が」「どの身体の部分を」について細かに研究したのが、カナダの脳神経外科医ペンフィールド(1891~1976)でした。
ペンフィールドは大脳のどの部分が、身体のどの部分に対応しているかだけではなく、脳の各部分の対応領域の割合の大きさまでもを解き明かしたのです。
これを表したのが、「ペンフィールドのマップ」と言われるもので、上に示した図になります。
大脳の上の部分は足の指、すなわち全身のごく下の部分、そして大脳の下の部分は喉や嚥下(飲み下し)と、全身の上の部分であることがわかりますね。
【グロテスクな「ペンフィールドのホムンクルス」は、身体の感覚情報のバランスをビジュアル的に再現したもの】
先ほど、ペンフィールドは「脳の各部分の対応領域の割合の大きさまでもを解き明かした」と述べました。
これは要するに、大脳の各部分と身体の各部分の対応領域のサイズに、ばらつきがあるということです。
ペンフィールドのマップをよく見てみると、手や唇の占める割合が非常に大きいことがお分かりになるかと思います。
これは、人間が何かのモノやコトを認識するにあたっては、手や唇からの感覚情報が非常に重視されるということなのです!
ペンフィールドのマップをもっとビジュアル的にわかりやすくしたのが、上の画像の「ペンフィールドのホムンクルス」と言われる人形です。
大きすぎる手、突き出した舌に唇……。
なんともグロテスクな人形ですが、私たちの脳が、身体のどの部分の感覚情報に重きを置いているのか、一発で理解できますね。
【「手先を動かすと認知症にならない」の裏付け!?】
「手先をよく動かすと、認知症になりにくい」
「咀嚼をよくすると、健康でいられる」
「キスには実は健康効果がある」
こんな話をあなたも耳にしたことはありませんか?
ペンフィールドのホムンクルスを見ていると、これらの話が科学的な裏付けがあるものだということがお分かりになるんじゃないでしょうか。
ホムンクルスの中での大きいパーツからの運動刺激は、私たちの大脳の大部分を活性化させることに繋がるからなんですね。
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