ホームレスだけが販売者になれる雑誌!?『ビッグイシュー』について知りたい!
ホームレスの方が、道端でなにか雑誌を売っているのを見かけたことがありませんか?
私がその光景を初めて目にしたのは、確か大学生の頃だったと思います。
その雑誌はとても綺麗な刊行物で(表紙を飾っているのは有名なハリウッド俳優でした)、なんでホームレスのおじさんがそれを売っているのかさっぱりわからない。なんだか胡散臭いような感じもし、足早に通りすぎてしまったのです。
今にして思えば、あのホームレスのおじさんが売っていたのは『ビッグイシュー』という雑誌だったのです
今回は、ホームレスの人”だけ”売り子になれるという、『ビッグイシュー』についてお話しましょう。
ホームレスだけが売り子になれる、『ビッグイシュー』のシステム
『ビッグイシュー』はもともとイギリスで生まれた、ホームレスの自立支援のための雑誌です(こういう雑誌を総じて「ストリートペーパー」と呼びますが、日本では一般的ではないですね)。
まず、ホームレスの人のほうで名乗りを上げれば、無償で10部が提供されます、1部の価格は350円。すべて売れたら、3500円になりますよね。
そして二回目以降は、1部170円でホームレス側が仕入れます。1部につき180円の利益が手元に残ります。これでホームレスの定住地を見つけるための元手にしてほしい、ということなのです。
『ビッグイシュー』側で想定しているステップは以下の3段階(『ビッグイシュー 日本版』公式サイトより引用)。
●第1ステップ 簡易宿泊所(1泊1000円前後)などに泊まり路上生活から脱出
(1日20~25冊売れば可能に)
●第2ステップ 自力でアパートを借り、住所を持つ
(1日25~30冊売り、毎日1000円程度を貯金、7~8ヶ月で敷金をつくる)
●第3ステップ 住所をベースに新たな就職活動をする
最終的には、就職活動を行って新たな職に就くことまで見越しています。だから、ホームレスが売り子を卒業することが『ビッグイシュー』側の願いでもあるわけです。
ブラット・ピットに松本人志まで!?驚きの『ビッグイシュー』の内容
しかし、いくら「ホームレス支援のための雑誌」だからって、「内容がつまらなかったら買いたくない」なんて思ってしまう筆者です。事実、継続的な読者を増やすには内容も充実させる必要があると思います。
その点、『ビッグイシュー』は内容にもこだわりが。
海外の俳優のインタビュー記事や、国際問題などについても掘り下げています。それに、根っこには社会的弱者の人(正確には弱者とされてしまう人)への視点から、幅広い記事を載せています。
たとえば、2015年10月15日発売の、『ビッグイシュー 日本版』273号では、
・バンド、マムフォード&サンズのインタビュー
・宇宙開発しませんか!・・・町工場などの独力での宇宙開発についての内容
・紛争地域から最多の難民を受け入れようとしているドイツの現況
など充実した内容になっています。
特に歴代のインタビュー記事には、泣く子も黙る有名人が数多く出ています。ブラット・ピット、ベネディクト・カンバーバッチ、アン・ハサウェイ、エマ・ワトソン、松本人志、藤原紀香などなどなど本当に多数。『ビッグイシュー』でしか見られないとなると、かなりレア度が高いと言えます。
ちなみに、表紙とインタビューを海外の俳優が飾ることが多いのは、『ビッグイシュー』がもともとイギリス発の雑誌であり、海外の方のほうが活動に理解が深いからです。
その上で、日本人向けの内容を作っているというこだわりもあるというわけですね。
『ビッグイシュー』を購入するには
『ビッグイシュー』はホームレスのための支援になりますから、ぜひホームレスの売り子さんから購入しましょう(本屋さんやネットじゃ買えないんですよ!)。
販売場所は公式サイト(http://www.bigissue.jp/sell/index.html)でも紹介しているので、こちらをチェックしてみるのもいいでしょう。毎日同じ時間・同じ場所で売っているホームレスの方もいますが、そこは人間ですからお休みする日もあるでしょうし、買えるかどうかは運の要素も大きいですね。むしろ見かけたらラッキーくらいに思って、購入してみるのがいいと思います。
『ビッグイシュー』の販売者は、首から販売者証をぶら下げていますので、その点も見るようにしてくださいね。
でも、「いつも買っていたのに、販売者が『ビッグイシュー』売上で職を見つけて、ホームレスを卒業してしまった! それはすごくめでたいけど、もう買えなくて困る!」なんて自体もあります。
というわけで、この秋から『ビッグイシュー』は定期購読の申込が個人でできるようになりました。定期購読の場合は、販売者から買うわけではないので、ホームレスさんの懐にはいきませんが、会社自体の応援になります。
最後に――ホームレスは「他人」か?
ホームレスというと、衣食住に満たされた私たちにとってはまるで関係のない人のように思えるかもしれません。ですが、どのような人がホームレスになってしまったかを知ることで、その社会が抱える問題をも知ることができます。
たとえば、現在の日本では20、30代のホームレスが増加の傾向にあります。その点を鑑みると、今の社会でどのようなことが足りないのか、自ずと見えてくるかもしれませんね。