占いの科学的根拠はない。しかし「科学的な効果は期待できる」理由とは?
「今日の占いの一位は山羊座のあなた!ラッキーカラーはイエローです!」
なんて毎朝の情報番組でやっていますよね。
占いは科学的根拠がないという意見もありますが、それでも多くの人の心をつかんで離さないのは、実は科学的な理由があるってご存じでしたか?
きっとあなたも聞いたことのある、「プラシーボ効果」というやつなんです。
【占いの科学的根拠はない。しかし科学的な効果は期待できる】
まず最初に「占いには科学的な根拠はない」ということを了解していただいた方のみ、お読みになって欲しいと思います。
占いに科学的根拠はまったくありません。
血液型占いも星座占いも、細木数子の不幸の予言も、当たったり、当たらなかったりします。そもそも誰にでも当てはまるようなことしか言わないし、書いていないからです。
しかしそれでも人は占いが大好きで、時に神頼みのような気持ちで頼ることがあります。それには理由があるのです。
脳科学者として知られる茂木健一郎氏は、著書『考える脳』(2013年 PHP研究所)で、こんなことを書いています。
「ぼくは10月20日生まれの「てんびん座」である。学生の時、雑誌『ぴあ』の星占いのコーナーを毎号見ていた。別に何の考えもなく、毎回、「おっ、当たっているじゃないか」などと思っていた。
【中略】
占いは、1つの芸術である。「あなたは酸素を呼吸しています」などという、明らかに誰にでもあてはまることを書けば、そんなことは当たり前だとバカにされる。一見、自分宛てに書かれたように見えて、実は誰にでもあてはまる文章を書くという絶妙なバランス。そこに「占い」の領域がある。」
脳科学者である茂木氏も、占いを「当たっている」という風に感じていたのは面白いですね。一方、彼は占いがなぜ当たるのか、すなわち占いが誰にでも当てはまるように書かれていることに、気がついていたわけです。
そして、その書きぶりの絶妙さを「芸術」として評価しているんです。
「「占い」は、それがあるメカニズムに基づいているかどうか、「当たる」か「当たらない」かということが本質ではないのだと思う。それは、いわば、脳の認識の回路に働きかける、「プラシーボ」のようなものなのだろう。
これは薬だと言って、砂糖のかたまりをあげると効く。この「プラシーボ効果」は、脳活動計測によって、脳の自己治癒能力が引き出されるものとわかっている。むろん、限界もある。しかし、限界の範囲内では効くのだ。占いの効用も、つまりはそのようなものだろう。
【中略】
もともと何の根拠もないものを、信じることで効果が生まれる。つまり占いは、「鰯の頭も信心から」である。」
ここで茂木氏は「占い」の効力の本質である、プラシーボ効果について解説します。
プラシーボ効果とは、偽薬効果とも言い、
「この薬効くよ!」
と言ってなんでも無い砂糖の塊などを患者に与えると、なぜか本当に効果が出てしまうというもの。
プラシーボ効果は茂木氏が述べている通り、本当に存在するとわかっています。
効果には限界があるものの、限界の範囲内では効くのです。
根拠が無いという点では、砂糖の塊も占いも同じ。
それでも本人が信じることでプラシーボ効果が生まれ、効果が期待できる……。
そういう意味ではつまり、占いは非常に意味のあることなのだ、と。
【非科学的な占いは、科学的なプラシーボ効果が期待できるものなのだ】
占いは当たるか当たらないかはこの際関係なく、「 プラシーボ効果」を得ることのできるものという点で価値がある。
たとえば、ここに、血液型A型でがさつでずぼらな人がいたとします。でも内心ではその短所を直したいと思っている。
彼が「あなたは几帳面な人です」という占いの文章を見て「そうか、僕はA型なんだから、本当は几帳面にだってできるはずなんだ!」と一念発起し、よりよく生きようとする―ー占いにはそんな効能が期待できるんじゃないでしょうか。
そしてプラシーボ効果は、対象をそれと信じていればいるほど高まることがわかっています。ですから、占いを信じている人のほうが、そうじゃない人よりも効果が期待できるのです。
このことを経験的に・無意識的に知っている人(「やはり占いは当たるから、信じたほうがいい」と思っている人)が、占いをさらに積極的に信じるようになるだと筆者は思います。
もちろん、明らかに現実にそぐわないのに、占いの結果ばかりを優先して物事を決めてしまうのは良いこととは思えませんが。
【アレキサンダー大王、レーガン大統領、松本幸四郎・・・世界中のリーダーが占いに頼っていた】
かのアレキサンダー大王は、政治的なを決定するときに占星術を利用していたと言われています。
また、アメリカの第40代大統領、ロナルド・レーガンもまた占星術を政治の参考にしていたということが知られています。
日本でも岸信介、松下幸四郎などが藤田小女姫という占い師の元へと通っていたとか。
組織のリーダーになる人は重大な責任と決定権を持ち、そのプレッシャーは組織の大きさと比例します。
そのため、彼らは「占い」という手段を用いて、プラシーボ効果を得ていたと考えられます。
「組織の大切な局面で占いに頼って大丈夫なのか!?」
という気もしてきますが、そもそもリーダーになる器を持った人たちですので、右も左もわからない状態で占いに頼っていたわけではないでしょう。
重大な決断を下すにはプレッシャーがかかります。
すでに(頭での)判断は決まっていた場合でも、「それで間違いない」という心を決めるため・背中を押して貰うために、占いの結果を良いように解釈していたと考えられます。
もっと簡単に言ってしまうと、「験を担いでいた」だけという言い方もできるかも。験を担ぐことで彼らの背負っていた重圧がある程度軽くなったのなら、やはり占いをうまく活用していたんだと言えますね。
【最後に】
科学的根拠のない占い。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。
でも私たちの心には「科学的に」とても役立ちそうではありますね。
あ、でも私は占い信じていないので、プラシーボ効果も期待できないや……。