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私たち日本人が大好きな「マグロ」。 「もうすぐ食べられなくなる」という悲観的なニュースもあれば、「完全養殖に成功!これからどんどん安く食べられるようになる」という明るいニュースもあります。 「おいしいマグロが安く食べられるなら、別に天然じゃなくてもいいよ!」という人は多いでしょうが、実際は、養殖マグロが普及しても、マグロの値段は安くなりません。 むしろマグロがどんどん食べられなくなる、というシナリオのほうが事実に近いかもしれないのです。 その理由とは?

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【改めて考える】養殖マグロが増えてもマグロが安くならない理由。

私たち日本人が大好きな「マグロ」。

「もうすぐ食べられなくなる」という悲観的なニュースもあれば、「完全養殖に成功!これからどんどん安く食べられるようになる」という明るいニュースもあります。

「おいしいマグロが安く食べられるなら、別に天然じゃなくてもいいよ!」という人は多いでしょうが、実際は、養殖マグロが普及しても、マグロの値段は安くなりません。

むしろマグロがどんどん食べられなくなる、というシナリオのほうが事実に近いかもしれないのです。

その理由とは?

私たち日本人が大好きな「マグロ」。

「もうすぐ食べられなくなる」という悲観的なニュースもあれば、「完全養殖に成功!これからどんどん安く食べられるようになる」という明るいニュースもあります。

「おいしいマグロが安く食べられるなら、別に天然じゃなくてもいいよ!」という人は多いでしょうが、実際は、養殖マグロが普及しても、マグロの値段は安くなりません。

むしろマグロがどんどん食べられなくなる、というシナリオのほうが事実に近いかもしれないのです。

その理由とは?

近畿大学がマグロの完全養殖に成功したというニュース(2002年)から、はや十数年。
食卓に並ぶクロマグロの中で養殖物が占める割合は徐々に増えてきています。

「そうか、マグロの養殖がうまくいっているんだ! 天然ものはなかなか手が届かなくても、これからは養殖のマグロを食べていければいいや!」 

と思っていませんでしたか?
私は思っていました。

どうやらそんなに甘いものではなさそうです。

その背景には、

・養殖は実はそんなにうまくいっていない
・仮にうまくいっても安くはならない

という事情があるようなのです。

養殖のマグロは消費量のほんの数パーセント。天然ものは絶滅危惧種になっている!

天然ものと養殖ものの消費量の比率は、まだまだ天然の方が上回っています。
日本人は年間約40万トンのマグロを食べますが、養殖が進んでいるのは特に商品価値が高いクロマグロ(本マグロ)です。

クロマグロは年間4万トン消費されていますが、養殖はそのうちの約1万トンです。

つまり、40万トン消費するうちの、1万トンくらい(2.5%)が養殖ということなんですね!

一方、養殖の対象になっていないマグロとして、ミナミマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロ、キハダマグロなどが上げられますが(実際はミナミマグロとキハダマグロは少し養殖あり)、いずれも絶滅危惧種リスト(IUCNレッドリスト※)に入っているほど資源量が減っています。

※ミナミマグロのIA類 (最も絶滅が危惧されるランク)からキハダマグロのLC類(軽度懸念)まで、種類によって程度が異なります。


要は、脚光を浴びている養殖ものというのは、マグロ全体のほんの一部に過ぎない、ということなんですね!


photo by merec0 on flickr

とは言え養殖マグロには希望もあるのでは?養殖マグロのいいところ!

もう少し、養殖マグロについて見ていきましょう。

養殖には天然に較べていいところが幾つかあります。それをひとことでまとめると「安定感」です

1. いつでも脂ののったトロができる

生け簀では、マグロはエサを求めて必死に泳ぐ必要がありません。
のんびりと泳ぐことによって、全身に脂が多いマグロになります。(テレビでも「全身トロマグロ」などと紹介されていたことがあります)

天然ものは冬は脂が乗りますが、夏は痩せたマグロになり、価格も養殖を下回るほどなのです。


2.安定供給できる

漁不漁の心配がないので、常に安定した供給ができるようになります。
これは飲食店にとっては大きなプラスですね!


3.品質を管理できる

エサの与え方によって脂の乗りや健康状態を調整できるだけでなく、出荷するまでの処理方法も管理できます。

天然ものを捕獲する場合、マグロは必死に抵抗するので、体温が上がります。
40度を超えると身が変質して「焼ける」という状態になります。
色がくすみ、水分が抜けてスカスカになってしまうので、味が落ち、価値が大幅に下がってしまうのです。
これは、定置網や一本釣りで比較的多く起こります。

一方養殖の場合は、針を付けたエサを放り込み、エサを食ったら釣り糸に電流を流して気絶させ、すぐに神経を抜いて氷漬けにするので、味が落ちないのです。



日本はマグロをはじめとする魚の養殖で世界トップクラスの技術を持っています。その技術の象徴が、マグロの「完全養殖」を実現した近畿大学の「近大マグロ」です。

完全養殖とは、養殖のマグロが生んだ卵を育て、次の世代のマグロを育てていく、というサイクルを確立させることです。

そうでない大半の養殖は、天然の稚魚を捕まえてきて育てる「蓄養」と呼ばれるものです。


photo by wall street journal

マグロの養殖が少しづつでも産業として育ってもらえれば、という願いはあるものの、その道のりは決して簡単なものではありません。

マグロの養殖を取り巻く困難を少し見てみましょう。


問題1.稚魚(ヨコワ)の確保がさらに厳しくなっている

先述のとおり、養殖と言っても、完全養殖の近大マグロ以外は、マグロの稚魚(ヨコワ)を獲って生け簀で太らせる「蓄養」と言われるものです。

結局稚魚を獲って来ないといけないのですが、稚魚とともに、それを生み出す親魚自体が激減しています。

クロマグロに関しては、自然状態の親の魚の量を100とすると、3.6くらいになろうとしています。
資源管理上、適正と言われるのが40から50より上ですから、かなり危機的な状況と言えます。

参考リンク: http://katukawa.com/?p=5089


問題2.エサが高すぎる

マグロのエサには、イワシ・サバ・イカなどの生のエサを使っています。マグロを1kg太らせるためには、イワシを15kg前後食べさせなければならず、そもそも養殖はとても非効率なのです。

現在のところ魚粉などをつかったペレット(練り餌)で代替することはできていませんし、近々できるという見込みも立っていません。

エサ代や設備投資、人件費、稚魚の仕入れや台風のリスクなどを考えると、1kg3,000円以下で売ると採算割れしてしまうので、どうしても安く提供することはできないし、なかなか儲からないのです。

多くの事業者が、なんとか食糧を確保していきたい行政による公的資金によって事業を継続できている状態なのです。

参考リンク: http://horiemon.com/talk/10929/


問題3.養殖できる場所が限られている

マグロが売れることは分かっているのだから、養殖場を拡げてスケールメリットを出しては、と思ってもこれも難しいのが現状です。

現在日本にはマグロの養殖場は95箇所ありますが、高い水温、生け簀を浮かべられる広さ、ある程度の深さ、がある湾でなければならず、適正な場所はほぼ使い尽くしてしまっているのです。

参考リンク: http://www.yousyokugyojyou.net/index4.htm

こんな状況の中、はたして明るい未来は待っているのでしょうか?

日本食の普及で市場を世界に求められるのだから、海外に養殖場はいくらでも探せる!

マグロもいずれ完全養殖によるサイクルが主流になる!

いずれ生餌ではなく固形のペレット(練り餌)で養殖できるようになる!

などなど、楽観的なシナリオはいろいろ浮かんできますし、新聞にももそういう楽観的な論調が見られるのも事実です。

しかし、そんな簡単な話ではない、というのが関係者の一様な実感ではないでしょうか?

たとえばこんな(明るい)ニュースがあります。「近畿大学と豊田通商が完全養殖クロマグロの生産量を2020年に現在の年80トンから約3倍の240トン(約6000匹)に増やすと発表」

完全養殖の近大マグロが3倍に!

というニュースですが、日本人が年間4万トン食べるクロマグロうちの、現在80トン(0.2%)を、240トン(つまり0.6%)にする、というニュースです。

総じて言えることは、現在は、採算に乗らないマグロの養殖を、公的資金によって無理やり事業として推進している、という状態です。

少なくとも今の事業を採算ラインに乗せる(簡単に言うと1kg3,500円で売れるようにする)には、養殖の良さ(いつでも脂が乗っておいしい、健康的なエサを使っている等)をしっかりとアピールして、高くても買ってもらえるブランドを作る必要があるでしょう。

一方、私たち消費者も、天然=うまい=高い、養殖=まずい=安い、という天然信仰に捉われず、本当においしければ適正な値段を出す、という選択眼を持ちたいところです。

それによって持続的においしい魚を食べられれば、という思いです。

photo by TheAnimalDay.org on flickr

モーロック

普段は地下に住んでいます。

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むしろマグロがどんどん食べられなくなる、というシナリオのほうが事実に近いかもしれないのです。

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