幼い少女への強制労働・性的虐待……ネパールの「カムラリ」を知っていますか?
10歳の少女の日常生活を思い浮かべてみてください。
ランドセルを背負って小学校へ通い、授業を受けて友達とおしゃべりしながら帰宅。
友達とシール交換をしたり、可愛い色のペンをたくさん集めたり。
「今日は塾の日だから憂鬱だなぁ。でも先生のことは嫌いじゃないなぁ」
「将来の夢はAKB48に入ること!」
なんて。
日本ではそういう風に過ごす女の子がきっとたくさんいるはずです。
でも、世の中には、そんなのん気で素敵な子供時代を過ごせない少女たちも、確かに存在するのです。
今日は日常を奪われた奴隷とでも言うべき、ネパールの少女労働「カムラリ」についてお話します。
Photo by riccardo cilli
【カムラリのひどすぎる労働状況】
カムラリとはネパールの少女労働のことです。
わずか数十ドル(日本円で何千円レベル)で売りに出された貧しい家庭の少女(その多くはタルー族という先住民族)は、雇用主の家で奉公させられます。
奉公の内容は子守や家事などが主なものですが、問題は強制労働と虐待(性的なものも含む)が日常的に行われているということです。
相手が少女なので、腕力で簡単にねじ伏せることができてしまうんですね。
この背景には、ネパールで根強く残る奴隷制度があります。
「自分より格下のものは、自由にしていい。もちろん暴力を振るってもいい」
奴隷制度がこういった人権の不平等を支える思想なのは、言うまでもないことですね。
ネパール国内でもカムラリは明らかに違法なのですが、奴隷制度的発想が残っているので、これを悪いことだと捉えている人が少ないのだと思います。
もしも体調不良や性的虐待の末の妊娠をして働けないなどの場合、カムラリを出した家で別のカムラリを送らなくてはいけないことになっています。
「レイプで姉が妊娠して働けなくなったから、妹を代わりに差し出す」
……こんな雇用主側に圧倒的に有利なルールが、まかり通っています。
【カムラリでなくなった元少女たちは、唯一売れるものを売るようになる】
カムラリの少女たちはほぼ奴隷ではありますが、唯一の救いはそれが永年ではないということです(もちろん雇用主の意向にもよるんでしょうが)。
10年ほどの奉公をした少女たちの中には、大人の女性になり、一応カムラリを卒業するものも出てきます。
ですが、彼女たちは家に戻ることはできません。
家に戻ることは、困窮した実家の食い扶持を一つ増やすことになるからです。
そこで彼女たちは、新たに働ける場所を探すことになります。
でも、教育を受けさせてもらえず、日々強制労働と性的虐待を受けてきた彼女たちが、手っ取り早くできる仕事って「売春」だけなんです。
結果、カムラリだった元少女たちは売春宿で働くことになります。
児童の強制労働は、「売春することでしか食べていけない」女性を多く生んでしまうのです。
こうして性的に搾取される女性が、一人また一人と増えていきます。
もちろん、売春宿でも虐待が行われることがあるので、カムラリ時代と比較しても五十歩百歩。
元少女たちは精神的に追い詰められ、エイズなどの性病にかかり、時に望まない妊娠をし、
絶望の淵に立たされます。
【ネパール国内でも、カムラリや売春宿で不当に働かされる女性たちを救う活動が!】
このような現状をどうにかしたいと、ネパール国内でもカムラリや、性的に搾取される女性たちを助けようとする動きが出てきています。
その一つが彼女たちを救助して匿うセーフハウス。
彼女たちの当面の衣食住を助けます。
元売春婦だった彼女たちは性病を患っていることから、かつて住んでいた村には戻れません。
病気のことで非難される身の上だからです(好きで性病になんてなる女性はいないのに!)。
日本で生まれていたらおしゃれや恋愛や勉強で忙しかったはずの10代の少女が、病気でぼろぼろになり、ひっそりと死んでいくことも珍しくありません。
元カムラリだった国会議員であるシャンタ・チャウダリさんは、カムラリ撲滅のための活動をしています。
彼女の著書であり、カムラリの問題についてリアルに訴えた『カムラリから制憲議会議員へ向けて』は、ぜひ翻訳されて日本でも手に入るようにしていただきたいものです。
【最後に見ていただきたい動画ーー元カムラリの女性たち】
動画に登場している女性たちは、カムラリから解放され、現在ではカムラリ撲滅の活動をしている方々です。
ごく普通の、若く魅力的な女性。
どこにでもいそうな彼女たちの、リアル感。
彼女たちの涙を見ていると、目眩がしてくるほどに胸に迫る何かがあります。
ネパールから遠く離れた場所にいる私たちには、できることが限られています。
でも、涙を流している元少女たちの存在と、その問題を知ることはできるでしょう。
かつてこの日本にも「少女身売り」と呼ばれる同様のことはあったこと、少し思い出してみましょう。